「新人薬剤師・薬学生のための医療安全学入門〔改訂版〕―調剤過誤防止から副作用回避に向けた処方提案まで―」を発刊しました
2020年3月26日(木)、薬学教育モデル・コアカリキュラムの「医療安全」SBOを網羅した「新人薬剤師・薬学生のための医療安全学入門〔改訂版〕―調剤過誤防止から副作用回避に向けた処方提案まで―」を発刊しました。
全国の書店および、Amazonにてお買い求めいただけます。
患者安全のための「実務でのポイント」がわかる
コアカリ「医療安全」SBOを網羅した教科書
「調剤過誤防止から副作用の早期回避まで」として初版を発刊してから10年以上がたち、医療安全における薬剤師実務は「副作用回避に向けた処方提案」を行うまでに拡大してきました。
そこで、今回新たに薬剤師に期待される「患者安全のための薬剤師実務」の項を設けるとともに、「WHO患者安全」をはじめとする国内外の「医療安全」の最新情報を学べるよう、大改訂を行いました。
改訂版では、薬学教育モデル・コアカリキュラムの「医療安全」関連SBOを網羅しています。
⇒コアカリSBO対応表(PDF)はこちら
また、読者特典として「安全意識あがる君システム」及び「PHARM-2Eシステム」を無料で提供しております。ぜひご活用ください。
掲載内容
Part 1 医療安全の基本概念と現状
1-1 安全な医療の提供
1-2 WHOにおける患者安全の考え方とその取組
1-3 ヒューマンエラーの考え方と対策
1-4 医療事故情報収集等事業、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業
1-5 医薬品の副作用と安全対策
1-6 日本薬剤師会の安全対策
1-7 日本病院薬剤師会の安全対策
Part 2 調剤事故防止対策
2-1 調剤事故の現状と薬剤師賠償責任保険制度
2-2 事例の収集意義と分析方法
2-3 調剤事故防止対策(内服薬・外用薬・注射薬)
2-4 ハイリスク薬の重点対策
2-5 ハイリスク薬(抗悪性腫瘍薬)の重点対策
Part 3 調剤事故発生時の対応
3-1 調剤事故発生時の初期対応
3-2 薬剤師の法的責任
Part 4 医療安全に果たす薬剤師の役割
4-1 医療安全管理者の役割
4-2 医薬品安全管理責任者の役割
4-3 感染防止対策
4-4 地域連携と医療安全
Part 5 患者安全のための薬剤師実務
5-1 医療コミュニケーションの重要性と面談技法
5-2 副作用モニタリングのための面談技法
5-3 代表的な副作用の初期症状・検査所見
5-4 医薬品の副作用モニタリングと対処方法
5-5 医薬品のリスクコミュニケーションとその具体例
5-6 リスクを比較するアカデミックディテーリングとその具体例
編者 小茂田昌代(東京理科大学薬学部・教授)よりメッセージ
世界保健機関(WHO:World Health Organization)加盟国は、2002年の世界保健総会において、患者の安全が損なわれたことで、永久的な障害、入院期間の延長、さらには死に至る事例があり、「訴訟費用、医療関連感染症、収入の損失、障害及び医療費の合計が一部の国では年間60〜290億米ドルになる」という事実を報告いたしました。その後、「患者安全」が経済的利益にもつながるとして、2011年には、医療分野の将来の担い手が、それぞれの職務において、患者にとって安全な医療を提供することを理解し、実践するための基礎的な考え方を提供することを目的として『WHO 患者安全カリキュラムガイド多職種版』が発刊されました。
我が国では2007年の医療法改正において、保険薬局が医療提供施設の1つと位置づけられました。医療チームの一員として、医薬品の安全使用に関する薬剤師への期待は年々高まりつつあります。さらに分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、薬物治療の高度化・複雑化が進み、薬の専門家としての薬剤師の役割も拡大してきました。また、調剤や監査機器の進展に伴い、薬剤師の業務はモノからヒトへと大きな転換が必要であり、地域包括ケアにおける「かかりつけ薬剤師」の役割は、副作用・服薬状況のフィードバックにとどまらず、具体的な処方提案が求められています。
一方、薬学教育においては、2015年度より新たな「薬学教育モデル・コアカリキュラム─平成25年度改訂版─」がスタートいたしました。その「A基本事項」では、「(1)薬剤師の使命」として、「③患者安全と薬害の防止」が設けられ、「2. WHOによる患者安全の考え方について概説できる。」が新設されました。
このような薬剤師への新たなニーズに応えられるよう、新人薬剤師向けに、世界的な視野に立ち、より患者の視点を重視した医療安全のテキストへの改訂が必要と考えました。そこで、薬剤師教育にはさらに重要となる「患者安全のための薬剤師実務」の項をつくり、新たな「薬学教育モデル・コアカリキュラム─平成25年度改訂版─」の医療安全に関する事柄も網羅し、薬学部生のテキストとしても活用できる基本的なわかりやすい改訂版といたしました。
患者安全の考え方の理解を深め、患者安全に向けた行動ができる新人薬剤師や薬学生の教育にご活用いただければ幸いです。